2021-01-01から1年間の記事一覧
2021年ももう終わりということで、恒例にしている下半期に読んだ本からベスト10を選びました。フィクションとノンフィクションからそれぞれ5冊。読んだ本としては60冊くらいでいつもと変わらず。 まだ紙の本がメイン 選んでみてから気づいたのですが、本…
サイモン・シン『数学者たちの楽園 ――「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』(訳/青木薫、新潮文庫)を読んだ。『フェルマーの最終定理』などで有名なサイエンスライターが、アメリカのアニメ「ザ・シンプソンズ」に隠れた数学をおもしろく解説する本。 …
冷凍庫が大きな話題になったら、悪いニュースと考えてほぼ間違いない。何年か前、コンビニの店員が中に入った写真をSNSにあげて炎上したことがあった。今年に入ってからはコロナワクチンの低温保管でトラブルがいくつもあった。スエズ運河の事故で足止めにな…
呉明益『自転車泥棒』(文春文庫、訳/天野健太郎) 小説家で自転車マニアの「ぼく」が1台の自転車と再会する。それは父が乗っていたもので、20年前に父と一緒に行方がわからなくなっていた。自転車のたどった軌跡を追いかけながら、持ち主たちやその家族…
棋士にはみな師匠がいる。将棋界には師弟制度があって、プロの世界に入るには弟子入りをすることになる。最近どこの業界でもタテの関係の難しさが目立つけれど、将棋界は外から見ていていいなぁと思うことが多い。 たとえば地上波で放送されるNHK杯には、解…
読みたい本はたくさんある。冊数のこともそうだけど、それらの本がどんな状態にあるのかにも注意を向けてみてみたい。 まず読みかけの本がある。本棚にいれてある本、あるいは電子端末に保存した本がある。読みたいの中には未読と再読がある。まだ持っていな…
アイニッサ・ラミレズ『発明は改造する、人類を。』(訳/安部恵子、柏書房)をたいへんおもしく読んだ。人類の発明をあつかった本はたくさんあるけれど、あまり注目されていないエピソードを拾い上げているという印象。有名な物語の陰にかくれた発明者を描き…
文系と理系の話で、いまの日本から離れたものをということで、C・P・スノー『二つの文化と科学革命』(訳/松井巻之助、みすず書房)を読んだ。この本は3部構成で、表題の講演、講演の反響を受けてのコメント、第三者の解説とならぶ。ボリュームにすると1:…
今回はノンフィクション5冊、フィクション5冊ということで選んでみました。読んだ数は60~70冊で普段と変わらずですが、ノンフィクションの方でサイエンス系が多かった気がします。 まだ紙で読んでいる、という記録に ノンフィクション ポール・J・ス…
イアン・ハッキング『記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム』(訳/北沢格、早川書房)を読んだ。多重人格という現象を入り口に、記憶についての普遍的な議論へと展開していく。1995年の本ではあるが、SNS以降にもつながるような興味深いテーマが書かれて…
「足がつる」を意識しはじめたのは、小学校の低学年くらいだっただろうか。まわりでぽつぽつと、この言葉を聞くようになった。それは水泳の授業だったり、野球をしているときだったりした。 足がつった人はその場で止まって足をおさえ、とても苦しそうにして…
ポール・J・スタインハート『「第二の不可能」を追え!』(訳/斉藤隆央、みすず書房)を読んだ。理論物理学者である著者が、ありえないといわれていた物質を30年にわたって探求する過程を描いたノンフィクション。科学の良さがつまった好著だった。 私は早くか…
ブログを始めてから4年が経った。月一のペースとはいえ、自分でも意外なほど続いている。なにが良かったのだろうかと考えてみると、"しばり"をいれたことだと思う。 連想をきっかけに、本をつなぐように書くこと。これが思いのほか楽しい。なんとなくの連…
イアン・マキューアンの新刊『恋するアダム』(新潮クレストブックス、訳/村松潔)がでた。原題は"Machines Like Me"。人工知能がテーマの小説ということで興味をそそられて早速読む。 舞台になるのは、この世界とは別の歴史をたどった架空の1982年ロンドン…
だれもが知る棋士、羽生善治の世代には何人もの強豪棋士がいる。いわゆる羽生世代はなぜこんなにも強いのだろう?大川慎太郎『証言 羽生世代』(講談社現代新書)はこの問いの答えを追い求め、棋士たちにインタビューした記録である。 羽生善治、佐藤康光、…