野球本オールタイムベスト10(2026春)

今年に入ってから野球に関する本をいろいろ読んでいました。すごくおもしろい本がいくつもあり、このままでは上半期ベストの半分くらいが野球の本になってしまってまずい(?)ということで、この機会に野球本のオールタイムベスト10を選んでみます。 しばり…

ビル・ブライソン『アメリカを変えた夏 1927年』

白水社の〈現代史アーカイヴス〉を順番に読んでいる。5作目は、ビル・ブライソン『アメリカを変えた夏 1927年』(訳・伊藤真)。原題は"ONE SUMMER: America 1927"で、原著の発表は2013年。 ひと夏の出来事を通してアメリカの変化を描こう、という構想がタ…

『アフリカから来たランナーたち』、『カレー移民の謎』

本のタイトルを見たときによく起きること。気になってはいたけれど、頑張って調べようとまではしていないことが、本のかたちで1冊にまとまっているのならぜひ読んでみたい。 というわけで、泉秀一『アフリカから来たランナーたち 箱根駅伝のケニア人留学生…

アントニー・ビーヴァー&リューバ・ヴィノグラードヴァ編『赤軍記者グロースマン』

白水社のノンフィクションシリーズ〈現代史アーカイヴス〉を順番に読んでいる。4作目の『赤軍記者グロースマン 独ソ戦取材ノート1941-1945』(訳・川上洸)を読んだ。 第二次世界大戦中、ドイツとソ連のあいだで独ソ戦とよばれる激しい戦闘があった。本書は…

2025年下半期に読んだ本ベスト10

2025年の下半期に読んだ本のなかから、良かったものを10冊選びました。 このところ読む本のバランスがノンフィクションにかなり傾いているので、ノンフィクションから6冊、フィクションから4冊にしました。ノンフィクションは古いほうへ、フィクションは新…

雑記2025

ときどきブログのサイドバーに書いていた短文を今年もまとめておきます。旅先と本の話が異様に多いですね。来年もいろいろ出かけていきたいと思います。 旅先で図書館を見つけると、つい入りたくなってしまう。この前は、岡山県の玉野市立図書館に立ち寄った…

自選記事10(2025秋)

ちょうど1年前にこの記事を書いたことを思い出して、今年もやろうかなと思いました。 kinob5.hatenablog.com このブログには中心的なジャンルやテーマがありません。個々の記事はばらばらのことを書いていますが、振り返ってまとめてみるとなにかしら見えて…

方法から考える~佐藤雅彦『作り方を作る』、沢木耕太郎『紙のライオン』

横浜美術館で開かれている佐藤雅彦展を見に行った。平日の昼間なのに入場待ちするくらい人気だった。 だんご三兄弟、ポリンキー、ピタゴラスイッチなどそれぞれの作品のことは知っていたが、佐藤雅彦という名前で結びついたのはわりと最近のこと。あれもこれ…

ローレンス・ライト『倒壊する巨塔』

〈現代史アーカイヴス〉の3作目、ローレンス・ライト『倒壊する巨塔 アルカイダと「9.11」への道』(訳・平賀秀明)を読んだ。全世界を揺るがした2001年9月11日の同時多発テロ、いわゆる9.11について書かれている。 個人的に、9.11は記憶に残っている最初の…

デイヴィッド・レムニック『レーニンの墓』

白水社のノンフィクションシリーズ〈現代史アーカイヴス〉の2作目、デイヴィッド・レムニック『レーニンの墓 ソ連帝国最期の日々』を読んだ。たいへんな読書だった。まともに受け止めきれていない。 著者は1988年から1991年までの4年間、ワシントン・ポスト…

ノンフィクションの極北――海老沢泰久『F1 地上の夢』

少し昔のノンフィクションをあれこれ読んでいる。沢木耕太郎や山際淳司の作品を起点に探したときに、よく見る作家のひとりが金子達仁で、もうひとりが海老沢泰久だった。 海老沢泰久の作品は、「嫌われた男 西本聖」という短編だけ読んだことがあった。増田…

2025年上半期に読んだ本ベスト10

2025年の上半期に読んだ本のなかから、良かったものを10冊選びました。フィクションとノンフィクションをそれぞれ5冊です。この半年では、長めの作品をじっくり読むことができたかなと思います。 「物語の力」が人を救う フィクション 松家仁之『火山のふも…

偶然の感覚――松家仁之『火山のふもとで』を読んで

読み終わって、すぐにもう一度読みたくなる小説がまれにある。そう思うのは、すごく良かったなという感触がある一方で、あれはなんだったのだろうと自分のなかにひっかかるものがあるときだ。 松家仁之『火山のふもとで』の読書体験はまさにそんな感じだった…

ウェイド・デイヴィス『沈黙の山嶺』

登山家のジョージ・マロリーについて知っていたことは2つだけだった。 なぜエヴェレストに登るのかと問われ、"Because it's there."と答えた人。日本では「そこに山があるから」という意訳で広まっている。おざなりな返しのようでもあり、根源的な衝動のよ…

ノンフィクションの書き出しを読もう――好きな国内作品20

ポッドキャスト「こんな本どうですか」51回、ノンフィクションの書き出しについての話を聴いていた。本の書き出しで話題にあがるのは小説ばかりで、ノンフィクションの書き出しもまとめてみたらおもしろいのでは、と提案されている。 open.spotify.com 書き…

山際淳司『スポーツ・ノンフィクション傑作集成』③

山際淳司『スポーツ・ノンフィクション傑作集成』の感想続き。ボディビル、ボクシング、登山に対するそれぞれの流儀。 筋肉栽培法 正方形の荒野 逃げろ、ボクサー 八八四八メートルのラッシュアワー 筋肉栽培法 石井直方は東大助手として筋肉の研究をしてい…

〈ハヤカワ・ノンフィクション・マスターピース〉

最近、少し古めのノンフィクションに興味がでてきた。どうやって探していこうかと考えている。とりあえず、たまたま目にして気になったものをメモしたり、買ったりしている。 この前読んだ角幡唯介と沢木耕太郎の対談*1で、『さもなくば喪服を』という本が紹…

雑記2024

ブログのサイドバーのところに書いていた短文をまとめておきます。ちょこちょこ書いていたものを並べると、一気に書くのとはまた違って、時間経過がみえるので不思議な感じがします。1年は早いですね。 古典といわれるものがそろそろおもしろく読めるかもし…

2024年下半期に読んだ本ベスト10

2024年の下半期に読んだ本のなかから、良かったものを10冊選びました。全体の読書傾向としてはノンフィクションが多めになってきていて、来年はさらに偏りそうな気配がします。 ノンフィクション 鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたか』(文…

鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』

中学生の後半は楽しかった記憶が多い。野球部の先輩が引退して理不尽なことがなくなったし、部活のほかにも釣り、読書、ラジオ、プラモデルといった趣味が広がった。野球を一番熱心に見ていたのも、その頃だったかもしれない。というのも、これまでに見たな…

山際淳司『スポーツ・ノンフィクション傑作集成』②

じっくり読み進めている山際淳司『スポーツ・ノンフィクション傑作集成』の感想続き。今回は野球、ボート、バレーボール、スカッシュの短編4作。毎度のことながら、スポーツの動きを文章によって伝えるというのはすごいなと思う。 〈ゲンさん〉の甲子園 た…

自選記事10(2024秋)

2017年に始めたこのブログですが、少し前に記事が100本をこえました。更新のペースはゆっくりではあるものの、ここまで続いていることに自分でもびっくりしています。書くことによって初めて思いつくことがある、という発見が続いている理由かなと思います。…

山際淳司『スポーツ・ノンフィクション傑作集成』①

山際淳司が生前に自薦した作品を中心に編まれた、スポーツ・ノンフィクションの傑作集。2段組800ページの大著で80篇を収録している。ここに書いたのは、ページ数にして冒頭の4分の1にあたる5篇について。ここまではすべて野球がテーマとなっている…

宮西建礼「もしもぼくらが生まれていたら」

宮西建礼の短編集『銀河風帆走』(東京創元社)を読んだ。とりわけ印象的だった冒頭の短編「もしもぼくらが生まれていたら」について書いていたら長くなってしまった。 ※ネタバレしているので注意 高校生になった浅枝トオル、青原トモカ、磯本タクヤの3人は…

「読書会」を読む5冊

読書会のことが気になってきたら、まずは向井和美『読書会という幸福』(岩波新書)がいいと思う。翻訳者であり、中高一貫校の図書館司書でもある著者は、海外文学の古典を読む会に参加して29年になる(当時)。また学校の図書館では、学生たちとともに読書…

2024年上半期に読んだ本ベスト10

2024年上半期に読んだ本のなかから良かったものを10冊選びました。 好きになるまで ノンフィクション 佐々木秀彦『文化的コモンズ 文化施設がつくる交響圏』(みすず書房) 博物館、図書館、公民館、劇場・ホールを中心に、日本の文化施設の歴史をたどり、あ…

その本を読まないことで

『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』を買ったのは、発売直後の2019年だった。ユーフォシリーズの完結編である。それからもう5年ほど経っているが、まだ未読のままだ。読めないまま何年も経ってしまった本は部屋にいくつもあるが…

将棋ノンフィクションを読む09――鈴木忠平『いまだ成らず 羽生善治の譜』

鈴木忠平『いまだ成らず 羽生善治の譜』(文藝春秋)。2024年になって羽生善治九段の名前をタイトル入れた本が出る。それも話題のノンフィクション作家である鈴木忠平氏が書いたとくれば、期待は高まってくる。 羽生九段の半生記といった内容になるのだろう…

トム・スタンデージ『ヴィクトリア朝時代のインターネット』

19世紀にはテレビも飛行機もコンピュータも宇宙船もなかったし、抗生物質もクレジットカードも電子レンジもCDも携帯電話もなかった。 ところが、インターネットだけはあった。 どういうこと?と、冒頭からつかまれるトム・スタンデージ『ヴィクトリア朝時代…

沢木耕太郎ノンフィクションⅨ『酒杯を乾して』

〈沢木耕太郎ノンフィクション〉シリーズのラストは、観戦記を7作収録。うち1作は長編となっている。F1、陸上、ボクシング、スキー、オリンピックと競技はさまざまだが、著者ならではの角度からストーリーが紡がれていて、競技に詳しくなくても読むことが…