ウォルター・アイザックソン『コード・ブレーカー』

ウォルター・アイザックソンの新刊がでたので早速読んだ。『コード・ブレーカー 生命科学革命と人類の未来 』(訳・西村美佐子、野中香方子、文藝春秋)、上下巻。 ノーベル化学賞をとったジェニファー・ダウドナを主人公に、ゲノム編集技術を中心とした生命…

『子どもは40000回質問する』、『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』

「好奇心が大事になってきますね」みたいな話のシメってたまにあるけど、じっさいのところ、好奇心がどういうものなのかよくわからない。いい意味でもわるい意味でも使われるし、育むことができるのかも気になる。 イアン・レズリー『子どもは40000回質問す…

ウォルター・アイザックソン『イノベーターズ』

スティーブ・ジョブズの公式の評伝で知られる、作家ウォルター・アイザックソン。ジョブズの次の本では、コンピュータとネットワークの開発史をテーマとしている。『イノベーターズ 天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史』(訳・井口資仁、講談社…

小説オールタイムベスト10(2022夏)

唐突に小説のオールタイムベストを書き残したくなった。いつか見返したときに楽しそうなので。さっそく考え始めたが、しばりがないとどうにも決まらないので、作家1人につき1冊にする。順不同。 リチャード・パワーズ『舞踏会へ向かう三人の農夫』(訳・柴…

習慣はWordleのように

いつのまにかWordleが日課になっていた。ふだんスマホゲームをしないのに、めずらしく長く続いていて、もう200日以上になる。この程よく続けられる感じはなんだろうと思いをめぐらすうちに、習慣についていろいろ考えたので書いてみる。 Wordleのプレイ画面 …

将棋ノンフィクションを読む06――『泣き虫、しょったんの奇跡』、『奇跡の六番勝負』

里見香奈女流が棋士編入試験への挑戦を決めた。プロとの対局で好成績をおさめて規定を満たし、この8月から新四段5名との試験対局がはじまる。5局中3勝することができれば、女性初のプロ棋士の誕生ということで注目が集まっている。将棋界でプロになるに…

2022年上半期に読んだ本ベスト10

2022年の上半期に読んだ本から10冊選んでみます。フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊。読み終えた本は70冊ほどでいつも通りですが、面白そうな本が次々とあらわれるので、買うペースだけが早まっています。 真ん中の本が分厚いなー フィク…

リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』

今年のゴールデンウィークはどこかへでかけることもなく、1冊の本をじっくりと読んでいた。リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』(訳/森慎一郎、若島正 みすず書房)。待ちに待った日本語訳の刊行。850ページ二段組のボリュームにどっぷりとつかる、稀有…

『集まる場所が必要だ』、『メタバースとは何か』

社会学者のエリック・クリネンバーグ『集まる場所が必要だ――孤立を防ぎ、暮らしを守る「開かれた場」の社会学』(訳・藤原朝子、英治出版)を読んだ。コロナ以降、一か所に集まらないで働いたり、人と話したりということが増えた。集まることの意味はどれだ…

『欲望の植物誌』、『視覚化する味覚』

マイケル・ポーラン『欲望の植物誌――人をあやつる4つの植物』(訳・西田佐知子、八坂書房)の副題が気になって読み始める。植物が「人をあやつる」ってどういうことだろう?人が植物を育てているのであって、それは逆だろうという直感にひっかかる。 この本…

将棋ノンフィクションを読む05――『羽生 21世紀の将棋』、『藤井聡太論 将棋の未来』

順位戦が佳境を迎えている。藤井竜王はあと1勝でA級に昇級となる。順調に勝ち上がれば、最年少名人の可能性も残していて目が離せない。最終局を前に、A級を29期守った羽生善治九段の降級が決まった。去年もあやうくというところだったので、いつかそう…

『灼熱』、『ニュースの未来』

年末年始に読んだ本のことを書いてみる。 ひとつは小説、葉真中顕『灼熱』(新潮社)。舞台は第二次世界大戦期のブラジル日本人殖民地。2人の少年の人生を中心に、戦場から離れた地での混乱を描く。トキオはブラジルで地主の子供として生まれ、村で指導的な…

2021年下半期に読んだ本ベスト10

2021年ももう終わりということで、恒例にしている下半期に読んだ本からベスト10を選びました。フィクションとノンフィクションからそれぞれ5冊。読んだ本としては60冊くらいでいつもと変わらず。 まだ紙の本がメイン 選んでみてから気づいたのですが、本…

創作の裏側~『数学者たちの楽園』、『エラリー・クイーン 創作の秘密』

サイモン・シン『数学者たちの楽園 ――「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち』(訳/青木薫、新潮文庫)を読んだ。『フェルマーの最終定理』などで有名なサイエンスライターが、アメリカのアニメ「ザ・シンプソンズ」に隠れた数学をおもしろく解説する本。 …

トム・ジャクソン『冷蔵と人間の歴史』

冷凍庫が大きな話題になったら、悪いニュースと考えてほぼ間違いない。何年か前、コンビニの店員が中に入った写真をSNSにあげて炎上したことがあった。今年に入ってからはコロナワクチンの低温保管でトラブルがいくつもあった。スエズ運河の事故で足止めにな…

「時間への敬意」を描くということ――呉明益『自転車泥棒』を読んで

呉明益『自転車泥棒』(文春文庫、訳/天野健太郎) 小説家で自転車マニアの「ぼく」が1台の自転車と再会する。それは父が乗っていたもので、20年前に父と一緒に行方がわからなくなっていた。自転車のたどった軌跡を追いかけながら、持ち主たちやその家族…

将棋ノンフィクションを読む04――『師弟』、『絆』

棋士にはみな師匠がいる。将棋界には師弟制度があって、プロの世界に入るには弟子入りをすることになる。最近どこの業界でもタテの関係の難しさが目立つけれど、将棋界は外から見ていていいなぁと思うことが多い。 たとえば地上波で放送されるNHK杯には、解…

たぶんまだないけど読みたい本の話

読みたい本はたくさんある。冊数のこともそうだけど、それらの本がどんな状態にあるのかにも注意を向けてみてみたい。 まず読みかけの本がある。本棚にいれてある本、あるいは電子端末に保存した本がある。読みたいの中には未読と再読がある。まだ持っていな…

アイニッサ・ラミレズ『発明は改造する、人類を。』

アイニッサ・ラミレズ『発明は改造する、人類を。』(訳/安部恵子、柏書房)をたいへんおもしく読んだ。人類の発明をあつかった本はたくさんあるけれど、あまり注目されていないエピソードを拾い上げているという印象。有名な物語の陰にかくれた発明者を描き…

『二つの文化と科学革命』、『科学で大切なことは本と映画で学んだ』

文系と理系の話で、いまの日本から離れたものをということで、C・P・スノー『二つの文化と科学革命』(訳/松井巻之助、みすず書房)を読んだ。この本は3部構成で、表題の講演、講演の反響を受けてのコメント、第三者の解説とならぶ。ボリュームにすると1:…

2021年上半期に読んだ本ベスト10

今回はノンフィクション5冊、フィクション5冊ということで選んでみました。読んだ数は60~70冊で普段と変わらずですが、ノンフィクションの方でサイエンス系が多かった気がします。 まだ紙で読んでいる、という記録に ノンフィクション ポール・J・ス…

イアン・ハッキング『記憶を書きかえる』

イアン・ハッキング『記憶を書きかえる―多重人格と心のメカニズム』(訳/北沢格、早川書房)を読んだ。多重人格という現象を入り口に、記憶についての普遍的な議論へと展開していく。1995年の本ではあるが、SNS以降にもつながるような興味深いテーマが書かれて…

「足がつる」がわからない

「足がつる」を意識しはじめたのは、小学校の低学年くらいだっただろうか。まわりでぽつぽつと、この言葉を聞くようになった。それは水泳の授業だったり、野球をしているときだったりした。 足がつった人はその場で止まって足をおさえ、とても苦しそうにして…

『「第二の不可能」を追え!』、『トポロジカル物質とは何か』

ポール・J・スタインハート『「第二の不可能」を追え!』(訳/斉藤隆央、みすず書房)を読んだ。理論物理学者である著者が、ありえないといわれていた物質を30年にわたって探求する過程を描いたノンフィクション。科学の良さがつまった好著だった。 私は早くか…

本を2冊ならべて~『人文的、あまりに人文的』、『読書は格闘技』

ブログを始めてから4年が経った。月一のペースとはいえ、自分でも意外なほど続いている。なにが良かったのだろうかと考えてみると、"しばり"をいれたことだと思う。 連想をきっかけに、本をつなぐように書くこと。これが思いのほか楽しい。なんとなくの連…

『恋するアダム』、『レンブラントの身震い』

イアン・マキューアンの新刊『恋するアダム』(新潮クレストブックス、訳/村松潔)がでた。原題は"Machines Like Me"。人工知能がテーマの小説ということで興味をそそられて早速読む。 舞台になるのは、この世界とは別の歴史をたどった架空の1982年ロンドン…

将棋ノンフィクションを読む03――『証言 羽生世代』、『不屈の棋士』

だれもが知る棋士、羽生善治の世代には何人もの強豪棋士がいる。いわゆる羽生世代はなぜこんなにも強いのだろう?大川慎太郎『証言 羽生世代』(講談社現代新書)はこの問いの答えを追い求め、棋士たちにインタビューした記録である。 羽生善治、佐藤康光、…

2020年下半期に読んだ本ベスト10

半年ごとに書いている恒例のベスト10。今回はノンフィクションが多めになりました。 ノンフィクション 東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ) 「知の観客をつくる」というミッションで、株式会社ゲンロンを経営した10年の記録。それは戦記と呼ぶにふさ…

アセモグル&ロビンソン『自由の命運――国家、社会、そして狭い回廊』

前作『国家はなぜ衰退するのか』に続いて、たいへんな力作。前作では国家のもつ制度を包括的/収奪的という区分けで整理し、国家の繁栄とのかかわりを論じた。本書はその枠組みを発展させながら、人々の自由というテーマを扱っている。 本書の主張をシンプル…

『記憶のデザイン』、『独学大全』

近所の本屋に閉店のお知らせが貼ってあった。いまの部屋に引っ越してきてからの数年間、よく足を運んで本を買った店だ。特に目的もなく本棚を眺めるのも好きで、お決まりのコースができていた。 まず入ったら右に歩いて、雑誌コーナーへ向かう。なにかしら気…