沢木耕太郎ノンフィクションⅠ『激しく倒れよ』

文藝春秋80周年記念で編まれた沢木耕太郎の作品集がある、ということを知ったのは去年の秋だった。もう20年前の企画ではあるけれど、今年はこれを読んでいきたい。というのも、去年いくつかの本を読んで、文章の魅力にやられてしまい、これはどんなものを対象にしていてもおもしろいだろうという予感がしたから。

 

全部で9冊の作品集。どこから読んでもいいはずだが、とりあえず順番にいってみよう。『激しく倒れよ』と題された第Ⅰ巻には、スポーツにまつわる12の短編が集められている。せっかくなので、ひとつひとつ読みながらメモを残してみる。ついでに初出と文庫化情報も集めてみた。

 

沢木耕太郎ノンフィクションI 激しく倒れよ

  • 「儀式」
  • イシノヒカル、おまえは走った!」
  • 「三人の三塁手
  • 「さらば 宝石」
  • 「長距離ランナーの遺言」
  • 「ドランカー〈酔いどれ〉」
  • 「ジム」
  • 「コホーネス〈胆っ玉〉」
  • 「王であれ、道化であれ」
  • ガリヴァー漂流」
  • 「普通の一日」
  • 「砂漠の十字架」
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2022年下半期に読んだ本ベスト10

2022年も終わりということで、この半年に読んだ本のなかから良かったものを、フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊選んでいます。

 

「知ればきっと元気が出る」

 

フィクション

リチャード・パワーズ『惑う星』(訳・木原善彦、新潮社)

惑う星

リチャード・パワーズの新刊。今年は2冊も翻訳がでて、楽しみにしながら過ごしていた。最新作を読んだうえで、初期の作品も再読したくなっている。感想は下の記事に。

 

kinob5.hatenablog.com

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雑記2022

今年に入ってからブログのサイドバーのところに、近況みたいなものをだらっと書いていました(ブラウザ版のみ読める)。Twitterは字数制限があるし、ブログはしっかり書かなきゃみたいな意識があって、そのあいだくらいの感じで。アーカイブしないって最初に書いてますが、いざ上書きするともったいない気になって(貧乏性)、保存していたので振り返りもかねて並べてみます。

 

* * *
 
ここに場所をつくってみる。松岡正剛の千夜千冊のサイドバーコラムがけっこう好きだったのになくなってしまった。真似して、アーカイブされない文章を書いてみる◆読書の記録をつけていると、自分のもつ傾向がわかってくる。どうも文化史と技術史のあいだくらいが関心の中心にあっていろんな枝がのびている。科学が中心だと思っていたのだけど、それをやる人間込みの関心という方がしっくりくる。◆昨年末あたりから転職を考えはじめた。ようやく落としどころが決まり、ひと段落ついたかなというところ。いい選択ができたとは思っているけど、これからどうなるのかやや不安。◆1/28
 
 
磯光雄監督の『地球外少年少女』をNetflixで一気にみた。宇宙で生まれた子供と宇宙旅行にやってきた子供たちが宇宙ステーションの事件に巻き込まれサバイバルする話。シリアス、コメディのバランス感がよく、30分×6話で各話に山場がある構成。未来的なガジェットと考えてハックするマインドがいい。「フレーム」という言葉の使い方が印象的。◆定期的に2つの読書会に参加している。みんなで同じ1冊の本を読んできて、話すという形式。自分にはない視点の読みが聞けたりしておもしろい。選書という意味でも、いつもは自分で選ぶ本だけ読んでいるので、そうでない本を読む機会になっている。自分の偏り、フレームがどうなっているかに意識的にもなる。◆2/6

リチャード・パワーズ『惑う星』

リチャード・パワーズの新刊、『惑う星』(訳・木原善彦、新潮社)を読んだ。

惑う星

冒頭の1段落目はこんな風。

でも、僕らがそれを見つけるのは無理かもしれないってこと?私たちはテラスに望遠鏡を設置していた。晴れた秋の夜、アメリカ合衆国東部に残された最後の暗闇の縁。これほど良質の暗さはなかなか得がたく、これほど大量の闇が空を照らすこともめったにない。私たちは借りた山小屋を覆う木々の隙間に望遠鏡を向けた。ロビンは接眼レンズから目を離した。たぐいまれな能力を持った悲しい息子。九歳になろうとしているところだが、この世界とは折り合いが悪い。

ここを読むだけでぐっと引き込まれてしまう。最後まで読んだあとでまた読むと、少し印象も変わる。

 

以下、ストーリーの展開にふれるのでネタバレ注意。


宇宙生物学者のシーオと息子ロビンはふたりで暮らしている。NGOで動物愛護活動をしていたロビンの母アリッサは、すでに亡くなってしまった。シーオは宇宙の研究をしながら子育てをする。その1年ほどの物語だ。

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ウォルター・アイザックソン『コード・ブレーカー』

ウォルター・アイザックソンの新刊がでたので早速読んだ。『コード・ブレーカー 生命科学革命と人類の未来 』(訳・西村美佐子、野中香方子、文藝春秋)、上下巻。

 

コード・ブレーカー 上 生命科学革命と人類の未来 (文春e-book)コード・ブレーカー 下 生命科学革命と人類の未来 (文春e-book)

ノーベル化学賞をとったジェニファー・ダウドナを主人公に、ゲノム編集技術を中心とした生命科学革命を描く。ダウドナの半生と生命科学の歴史をおりまぜるようなストーリーになっている。

といっても、研究の世界のせまい話ではない。コロナ禍以降、RNAワクチンやPCRといった生命科学の用語が日常に入ってきた。遺伝子の検査や治療も広がっている。それらの基礎である生命のしくみについて理解することは、これから先さらに身近になってくるだろう。

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『子どもは40000回質問する』、『人は2000連休を与えられるとどうなるのか?』

「好奇心が大事になってきますね」みたいな話のシメってたまにあるけど、じっさいのところ、好奇心がどういうものなのかよくわからない。いい意味でもわるい意味でも使われるし、育むことができるのかも気になる。

イアン・レズリー『子どもは40000回質問する~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~ 』(訳・須川綾子、光文社未来ライブラリー)は、人の好奇心のありかたを掘り下げた本。

子どもは40000回質問する~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~ (光文社未来ライブラリー)

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