ウォルター・アイザックソン『イノベーターズ』

スティーブ・ジョブズの公式の評伝で知られる、作家ウォルター・アイザックソンジョブズの次の本では、コンピュータとネットワークの開発史をテーマとしている。『イノベーターズ 天才、ハッカーギークがおりなすデジタル革命史』(訳・井口資仁講談社)。

イノベーターズ1 天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史イノベーターズ2 天才、ハッカー、ギークがおりなすデジタル革命史

物語のスタートは1843年。エイダ・ラブレスが書いた、バベッジの解析機関への「注釈」から。多目的機械、論理演算、アルゴリズムなどの概念を記述していることから、この本ではコンピュータの理念的先駆者としてエイダを評価している。終わりは2011年、クイズ番組で優勝したIBMのワトソンまで。Deep Learning系の話はまだでてこない。
 
目次を見てみると、どの章を取り出しても1冊できそうな話がごろごろある。これらのつながりを意識して書かれているところが本書の特徴になる。
  • 年表
  • 序章 チームワークこそイノベーションの根幹
  • 第1章 ラブレス伯爵夫人エイダ
  • 第2章 コンピュータ
  • 第3章 プログラミング
  • 第4章 トランジスタ
  • 第5章 マイクロチップ
  • 第6章 ビデオゲーム
  • 第7章 インターネット
  • 第8章 パーソナルコンピュータ
  • 第9章 ソフトウェア
  • 第10章 オンライン
  • 第11章 ウェブ登場
  • 第12章 エイダよ、永遠に

小説オールタイムベスト10(2022夏)

唐突に小説のオールタイムベストを書き残したくなった。いつか見返したときに楽しそうなので。さっそく考え始めたが、しばりがないとどうにも決まらないので、作家1人につき1冊にする。順不同。
 
 
気分次第でどんどん変わるので、適当に打ち切る。いろいろと偏りがあるけど、とりあえずいまはこう。

習慣はWordleのように

いつのまにかWordleが日課になっていた。ふだんスマホゲームをしないのに、めずらしく長く続いていて、もう200日以上になる。この程よく続けられる感じはなんだろうと思いをめぐらすうちに、習慣についていろいろ考えたので書いてみる。

Wordleのプレイ画面

Wordleは5文字の英単語を当てるゲーム。1つの正解があって、入力した単語に同じ文字が含まれていたら黄色、位置も合っていたら緑色になる。そんなふうにして少しずつ候補をしぼっていき、6回以内に正解できればクリア。ただし、入力できるのは英単語だけで、無意味な文字列を入れることはできない。出題は1日に1つのみで、次のゲームはまた翌日。

 

www.nytimes.com

 

どんな感じでプレイしていたか

問題の更新は0時。自分は朝にやっていた。6時くらいに起きたら、スマホを手に取って、はてブTwitterGoogle Discoverなどを見たのちに、Chromeの最近開いたタブでWordleのページを開く。

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将棋ノンフィクションを読む06――『泣き虫、しょったんの奇跡』、『奇跡の六番勝負』

里見香奈女流が棋士編入試験への挑戦を決めた。プロとの対局で好成績をおさめて規定を満たし、この8月から新四段5名との試験対局がはじまる。5局中3勝することができれば、女性初のプロ棋士の誕生ということで注目が集まっている。

将棋界でプロになるには2つのルートがある。棋士のほとんど全員は、奨励会というリーグ戦を勝ち抜くことでプロデビューする。このリーグには年齢制限があり、定められた年齢までに勝ち上がれなければ退会になってしまう。

もうひとつのルートとして棋士編入試験がある。当時アマチュア強豪だった瀬川晶司六段への特例措置をきっかけとしてこの制度がつくられ、年齢に関係なくプロ棋士を目指せるようになった。これは将棋界にとって大きな決断だった。

 

編入試験制度が議論された当時の話を知りたいと思い、同じテーマの2冊を読み比べてみた。どちらもタイトルに「奇跡」という言葉が入っているが、それが意味するところはなんだろうと思いつつ。

まずは瀬川晶司六段の自伝で、映画化もされた『泣き虫しょったんの奇跡』(講談社文庫)。生い立ちからプロ入りまでの半生がつづられている。

泣き虫しょったんの奇跡 完全版 サラリーマンから将棋のプロへ (講談社文庫)

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2022年上半期に読んだ本ベスト10

2022年の上半期に読んだ本から10冊選んでみます。フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊。読み終えた本は70冊ほどでいつも通りですが、面白そうな本が次々とあらわれるので、買うペースだけが早まっています。

真ん中の本が分厚いなー

フィクション

リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』(訳・森慎一郎、若島正みすず書房

黄金虫変奏曲

リチャード・パワーズの第3長編が邦訳されたとなれば、読まずにいられない。今年のゴールデンウイークはこの本のことばかり考えていた。音楽、分子遺伝学、図書館学の語彙を駆使した文章が素晴らしい。一文一文を味わいながら、気長に読むのがいい。

kinob5.hatenablog.com

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リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』

今年のゴールデンウィークはどこかへでかけることもなく、1冊の本をじっくりと読んでいた。リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』(訳/森慎一郎、若島正 みすず書房)。待ちに待った日本語訳の刊行。850ページ二段組のボリュームにどっぷりとつかる、稀有な体験ができた。

黄金虫変奏曲

物語は、2組の男女の恋愛模様とレスラー博士の謎が中心になる。

ジャン・オデイが司書としてはたらく図書館にフランクリン・トッドがやってくる。ある男のことを調べてほしいという。スチュアート・レスラー、多くを語らない同僚。いまは情報処理の夜勤をしていて、昔は科学者だったらしい。調査を進める中で、ジャン、フランクリン、レスラーは親交を深めていく。

それが2年前。ジャンはレスラーの訃報をうけとり、出会った当時のことを記録する。それと並行して、若き日のレスラーが遺伝子の謎を研究し、ジャネット・コスと出会った年が描かれる。

 

とても長い本で、構成はかなり凝っているが、プロット自体はそこまで複雑じゃない。登場人物も多くないし、描かれている時間もこの厚さにしては短い。分厚さのわけは、物語の経過時間あたりの文章の密度が高いから、ということになる。そこが最大の魅力だ。

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