編集者・津野海太郎の文章をあつめた『編集の提案』(編・宮田文久、黒鳥社)を読んだ。かなり前に書かれたものもふくめて、いまこそ読まれてほしいということで2022年に出た本。
「第1章 取材して、演出する」がとりわけ印象に残った。この章には「テープおこしの宇宙」「座談会は笑う」「初歩のインタビュー術」「雑誌はつくるほうがいい」という4つの文章があり、いずれも章題のとおり、人に話を聞きにいって記事をつくることについて書かれている。
つまり編集について書かれていて、そこに「演出する」という言葉をつかうところに著者の意図が感じられる。というのも、原稿を依頼して受け取るのではなく、人に話を聞いて自分で文章にするというタイプの編集を指していて、そこに編集の魅力があるという。以下は「テープおこしの宇宙」からの引用。
続きを読む話しことばと書きことばのあいだの――その両方がかさなりあったり、ひしめきあったりしている空間に身をおくことが好きだ。いや、かさなったりひしめいたりなどと書くと、へんに充実した感じになってしまう。だから、つぎのようにいいなおしておく。話すことと書くこととのあいだには、けっして埋めることのできない隙間がある。私はその隙間に身をおいて仕事をすることが好きなのだ。(p.16)