呉明益

呉明益『眠りの航路』

「近ごろよく考えるんです。自分の父親がどうやって自分の夢に向き合っていたのか。でも、想像できないんです。ぼくにとって戦争は本当に遠くて、ぼんやりとしているから」(p.231) 呉明益の長編デビュー作『眠りの航路』(訳・倉本知明、白水社エクス・リブ…

「時間への敬意」を描くということ――呉明益『自転車泥棒』を読んで

呉明益『自転車泥棒』(文春文庫、訳/天野健太郎) 小説家で自転車マニアの「ぼく」が1台の自転車と再会する。それは父が乗っていたもので、20年前に父と一緒に行方がわからなくなっていた。自転車のたどった軌跡を追いかけながら、持ち主たちやその家族…