2017-01-01から1年間の記事一覧
2017年の下半期を振り返って、良かった本を選んでみました。フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊ということで。 フィクション 小川哲『ゲームの王国』 今年、一番好奇心を掻き立てられた小説。カンボジア圧政下で、少年と少女は世界を変えるために…
科学技術の発展は目覚ましい。少し前までは想像の世界だったものが現実になる時代。想像されたものはいつか現実する、そんな気さえする。科学技術の歴史は、想像力と隣り合わせで進んできた。想像力の世界を覗こうとするとき、フィクションはいい材料を提供…
ストリートビューに映り込む淡い記憶。レコメンドエンジンがほのめかす人の情。古い携帯にしみこんだ後悔。果ては、故人の人格が染み付いた人工知能とのすったもんだまで……。情報の海に人知れず降り積もる、どこかのだれかの物語を22編収録。 元IT系記者が描…
ディストピア小説というジャンルがある。ディストピアとは、理想郷やユートピアの真逆の意味だ。その中でも、ユートピアを本気で目指した結果、ある人にとってはディストピアになるというタイプの系譜がある。あるテクノロジーや価値観が徹底され、それに疑…
ある作家の本を初めて読んで、この作品は好きかもしれないと思えたら、そのあとはいつも決まってこうだ。作者のことを調べて、ベテラン作家ならどこから読もうかと悩み、新人なら全部読もうと心に決める。興味はどんどん広がる。 自分にとって、小川哲『ゲー…
『ピクサー流 創造するちから』は、アニメーションスタジオのトップをはしるピクサーの歴史とアニメーション制作の裏側を書いた本である。その歴史はそのままアニメーション技術の足跡になっている。また、経営に参加したスティーブ・ジョブズの知られざる一…
『マネー・ボール』を書いたマイケル・ルイスの新刊がでた。それが行動経済学の源流となった二人の心理学者の物語となれば読んでみたい。と思いつつ、なんでそのテーマ?とも思った。なぜなら、マイケル・ルイスの主戦場は、『世紀の空売り』や『フラッシュ…
上半期も終わりということで、振り返って、良かった本を10冊選んでみました。 フィクションから5冊、フィクション以外から5冊で順不同です。 G.K.チェスタトン『木曜の男』 初チェスタトン。いちばん衝撃を受けた。スパイもの、ミステリ、幻想などジャン…
人はどれだけ能動的なのか。意志というものは、たえず働いているのか。そんな疑問から本書は始まる。難しい話ではない。日常によくあることだ。いま酒を飲んでいるのは、意志によるものなのか?ゲームをやり続けてしまうのは?「強い意志をもて」ってどうい…
G.K.チェスタトン『木曜の男』の冒頭を紹介するとこんな感じになる。とあるきっかけから、主人公は無政府主義者の秘密結社にたどり着く。見事な立ち回りの末に、指導的立場を得る。首脳の会議は7名からなり、それぞれに曜日の名前がついている。主人公は木曜…
千葉雅也『勉強の哲学』(文藝春秋)を読んでいて、槙田雄司『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)を連想したという話。 勉強の哲学 来たるべきバカのために 作者: 千葉雅也 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2017/04/11 メディア: 単行本(ソフトカバー)…
電子書籍が登場してからというもの、ずっと考えていることがある。電子書籍だとうまく読めない、紙とは何かが違う。その何かとはいったいなんなのか、いつも名指せぬままだ。なぜか紙の方がしっくりくる。慣れの問題だろうか、それとも。短い記事ならスクリ…
アレックス・メスーディ『文化進化論』(NTT出版)を読んでいる。進化論という視点から、細分化された学問に統合的な見取り図をもたらすことを目指す。 文化進化論:ダーウィン進化論は文化を説明できるか 作者: アレックス・メスーディ,竹澤正哲,野中香方子 …
パーソナル・コンピュータの歴史をたどると、起源にアラン・ケイという人物がいる。コンピュータを研究者や専門家だけのものではなく、一般の利用へ普及するための理念を掲げた。それがDynabookと呼ばれる。具体的にも、マウスやウィンドウなど今では当たり…
『人工知能と経済の未来』を読んでいて、『賢い組織は「みんな」で決める』を連想したという話。 人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書) 作者: 井上智洋 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/07/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (18…
本を読んでいると、既視感に見舞われることがある。前にどこかで同じようなものを・・というような。記憶を頼りに本棚から探してみると、確かに似ている。でも、全く同じではない。比べてみるとより細かいところが見えてきて、それがおもしろい。ときにはあ…