近所の本屋に閉店のお知らせが貼ってあった。いまの部屋に引っ越してきてからの数年間、よく足を運んで本を買った店だ。特に目的もなく本棚を眺めるのも好きで、お決まりのコースができていた。
まず入ったら右に歩いて、雑誌コーナーへ向かう。なにかしら気になるものが目に入ってきて手に取る。それからエッセイ、ノンフィクション。おおよその並びは覚えているので、新刊があるとすぐにわかる。次は人文と自然科学の棚が向かい合うゾーンへ。本棚の幅に対して、
仲正昌樹がやけに充実していて誰かのこだわりかなぁとか思う。折り返して、政治・経済と見て・・・と続く。
こんな風に空間や本棚と結びついた記憶がある。他にも本屋はあるし、本はネットで買えるけれども、あの空間を歩きながら思いをめぐらすことはもうできない。
ちょうど読んでいた
山本貴光『記憶のデザイン』(筑摩書房)によれば、自分の記憶は自分の中だけで成り立っているのではない。外の環境と関わり合いによって生じている。この本では、膨大な情報がおしよせる環境にあるいま、どんな記憶の状態がよいだろうか、ということを考えていく。
今年の7月、藤井聡太七段は早くも2回目のタイトル挑戦をしていた。相手は、前年に最年長で初タイトルを獲得した木村王位。最年少と最年長、対照的な組み合わせになった。
樋口薫『受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基』は、木村の修業時代からタイトル獲得までの半生を描く。百折不撓(ひゃくせつふとう)とは、木村の座右の銘で、「何度失敗してもくじけないこと」という意味だ。その言葉に現れているように、タイトルへの道のりは険しいものだった。
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今年ほど、統計を意識させられる年もない。感染者数、陽性率、重症率、再生産数などの数字が毎日更新される。都道府県ごとのマップが作られて、時系列のグラフが作られる。初期に起こった、検査数と偽陽性をめぐる議論も、直観ではとらえにくい統計の話だった。
ここ最近、ずっと統計の存在感が増している。個人がスマホを手にし、ネットワークにつながり、生み出されたデータが分析される。計算能力の増大もともなって、統計データがさまざまな意思決定に関与している。
全盛期を迎えたといってもいい統計は、どんな歴史をもつのか。オリヴィエ・レイ『統計の歴史』では、主にヨーロッパで統計が定着していく様子をたどる。17~18世紀に基礎がつくられ、19世紀前半に急速に広まることになる。
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