前作『国家はなぜ衰退するのか』に続いて、たいへんな力作。前作では国家のもつ制度を包括的/収奪的という区分けで整理し、国家の繁栄とのかかわりを論じた。本書はその枠組みを発展させながら、人々の自由というテーマを扱っている。
本書の主張をシンプルに要約するなら、次のようになる。自由の実現には国家が必要で、その国家の力は社会と均衡している必要がある。このことを示すために、古今東西の豊富な事例が紹介される。この具体例の厚みが、本書の価値をぐっと高めているように思う。
続きを読む今年ほど、統計を意識させられる年もない。感染者数、陽性率、重症率、再生産数などの数字が毎日更新される。都道府県ごとのマップが作られて、時系列のグラフが作られる。初期に起こった、検査数と偽陽性をめぐる議論も、直観ではとらえにくい統計の話だった。
ここ最近、ずっと統計の存在感が増している。個人がスマホを手にし、ネットワークにつながり、生み出されたデータが分析される。計算能力の増大もともなって、統計データがさまざまな意思決定に関与している。
全盛期を迎えたといってもいい統計は、どんな歴史をもつのか。オリヴィエ・レイ『統計の歴史』では、主にヨーロッパで統計が定着していく様子をたどる。17~18世紀に基礎がつくられ、19世紀前半に急速に広まることになる。
遠くで手をふる小さなおとうさんは、他人みたいだった。
私は、あそこに立っている、いつまでもばかみたいに手をふり続けている男の人が大好きだと思った。