アレックス・メスーディ『文化進化論』(NTT出版)を読んでいる。進化論という視点から、細分化された学問に統合的な見取り図をもたらすことを目指す。
第1章では、文化の定義と重要性を確認する。定義を引用する。
文化とは、模倣、教育、言語といった社会的な伝達機構を介して他者から習得する情報である
区別すべきは、遺伝による情報と個人で学習した情報とある。そして、この「文化」こそ人類にとって重要であるとする。遺伝は伝達スピードが遅い(世代のスケール)、個人学習はコストがかかる(全部自分で毒見)のに対し、「文化」は伝達が速く、コストが少ないことがその理由である。
この観点から歴史をたどったのが、ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』(河出書房新社)ではないだろうか。
この本の中で「虚構」や「物語」と呼ばれているものが、上述した「文化」に対応している。
歴史の大半は、どうやって厖大な数の人を納得させ、神、あるいは国民、あるいは有限責任会社にまつわる特定の物語を彼らに信じてもらうかという問題を軸に展開してきた。とはいえ、この試みが成功すると、サピエンスは途方もない力を得る。なぜなら、そのおかげで無数の見知らぬ人どうしが力を合わせ、共通の目的のために精を出すことが可能になるからだ。
神、国民、有限会社以外にも、お金、人権、法律などなど実体のないものによって、人類の歴史は動いてきた。この軸の作り方は、とても見通しがいいように思う。(もちろんその前提として、遺伝由来の二足歩行とか脳の大容量化はある)
生物は進化によって多様化し、やがて人類は「文化」を武器に栄えた。そして、「文化」にも進化を見出せるなら・・・?