MCバトルと漫才

MCバトルのテレビ番組「フリースタイルダンジョン」をずっと見ている。始まってからもう2年半になる。MCバトルとは、即興のラップバトルのこと。とても中毒性が高く、毎週楽しみにしている番組だ。
 
いまとなっては普通に見てしまっているが、最初に見た時の衝撃はすごかった。すごいとしか言えない。すごいんだけど、いろいろ分からない。どんな風に頭を使えば韻を踏みながらこんなスピードで言葉を繰り出せるのか。そもそも、なんでこんなことが行われているのか。まさに異文化に出会ったという感じだった。
 
でも、その場には確かに共有されている価値観があり、その文化を語るための言葉もあった。見ているうちに少しずつ分かるようになった。
 
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新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

毎日のようにAIがニュースになる。身近なデバイスへの導入、技術のブレイクスルー、法律の整備などなど、その観点もさまざまである。その中でも、AIによって人間の仕事が奪われるのではないかという懸念をよく目にする。関連書も多い中で、他とは違う視点を出している本があった。新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』である。
AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 

 著者は数学者であり、また、「ロボットは東大に入れるか」を検証したいわゆる「東ロボくん」のプロジェクトディレクタでもある。本の前半では、このプロジェクトを解説するとともに、現在のAIの実力を示していく。現状では、東大の合格まではいかないが、MARCHレベルは合格圏内である。ここから、人間のすべての仕事がすぐになくなるということはないが、強力なライバルであるという見解を示す。

『バッタを倒しにアフリカへ』、『フンボルトの冒険』

研究者のノンフィクションを2冊読んだ。どちらもフィールドワークという共通点があるが、ひとつは現代、もうひとつは19世紀が舞台となる。冒険や自然との格闘、時代ごとの研究の背景など、並べて考えてみるのもおもしろい。 

前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

 

バッタ研究者の自伝的な活動の記録。まえがきからして、著者のバッタ愛がすさまじい。書き出しはこんな風。 

100万人の群衆の中から、この本の著者を簡単に見つける方法がある。まずは、空が真っ黒になるほどのバッタの大軍を、人々に向けて飛ばしていただきたい。人々はさぞかし血相を変えて逃げ出すことだろう。その狂乱の中、逃げ惑う人々の反対方向へと一人駆けていく、やけに興奮している全身緑色の男が著者である。

『トラクターの世界史』と『団地団』

高校までの歴史の授業が苦手だった。なんとなく、つかみづらい。いまから振り返ると、その原因は授業の内容が政治史を重視で、その政治にあまり興味がもてなかったということが大きい。

歴史は、政治以外のさまざまなものからも語ることができる。たとえば、話題になったハラリの『サピエンス全史』は、「虚構」を軸にしてサピエンスの歴史をとらえるという試みだった。もちろん、国家という虚構がもたらした政治への影響、みたいなかたちで政治にも触れているが。

そもそも歴史における重要な出来事とはなんだろう。それは、さまざまなものの個別の歴史における転換点だと思う。そういう意味で、影響範囲が広い政治史は重要だが、その重要性を理解するには政治史以外の歴史を参照する必要がある。なにか興味あるものの歴史をさかのぼってみて、教科書的な歴史との相似関係を見つけていくというような。

最近読んだ本で『トラクターの世界史』はまさにそういう本だった。

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2017年下半期に読んだ本ベスト10

2017年の下半期を振り返って、良かった本を選んでみました。フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊ということで。 

フィクション 

小川哲『ゲームの王国』

今年、一番好奇心を掻き立てられた小説。カンボジア圧政下で、少年と少女は世界を変えるために壮大な物語が動き出す。一方は脳波の研究、もう一方は政治家へ。世界のルールはどのように設定されるのかを問う。ジャンルを横断した知見が投入されている。kinob5.hatenablog.com

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ひみつ道具の物語~『透明マントを求めて』、『気象を操作したいと願った人間の歴史』

科学技術の発展は目覚ましい。少し前までは想像の世界だったものが現実になる時代。想像されたものはいつか現実する、そんな気さえする。科学技術の歴史は、想像力と隣り合わせで進んできた。想像力の世界を覗こうとするとき、フィクションはいい材料を提供してくれる。ドラえもんひみつ道具が実現された、なんていうニュースをたびたび目にしたりする。
 
『透明マントを求めて』は、タイトル通り、透明マントをつくる試みの歴史について書かれている。サブタイトルには、天狗の隠れ蓑からメタマテリアルまで、とある。透明になるという考えは古くから存在し、はじめはフィクションに現れる。それが時代を経て、メタマテリアルという形で実際に作られようとしている。