半年ごとに書いている恒例のベスト10。今回はノンフィクションが多めになりました。
ノンフィクション
東浩紀『ゲンロン戦記』(中公新書ラクレ)
「知の観客をつくる」というミッションで、株式会社ゲンロンを経営した10年の記録。それは戦記と呼ぶにふさわしい苦闘の連続だった。メンバーの離脱、資金繰り、多数の在庫などなど。一見、思想家とは思えない仕事もしているが、事務的な業務を抜きにして、継続的な活動が成り立たないことがよくわかる。思想と実践の結びつきや伝え方はどんどん具体的になり、リアリティを増していると感じる。印象的な個所を引用。
いまの日本に必要なのは啓蒙です。啓蒙は「ファクトを伝える」こととはまったく異なる作業です。ひとはいくら情報を与えても、見たいものしか見ようとしません。その前提のうえで、彼らの「見たいもの」そのものをどう変えるか。それが啓蒙なのです。それは知識の伝達というよりも欲望の変形です。
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