2018年上半期に読んだ本ベスト10

2018年の上半期を振り返り、読んだ本からベスト10を選んでみた。フィクションとノンフィクションの2つに分けて、それぞれ5冊ずつ。 フィクション 樋口恭介『構造素子』 第5回ハヤカワSFコンテスト大賞のデビュー作。作家と物語、親と子、人類と人工知能の…

「知らないこと」と向き合う~『知ってるつもり 無知の科学』、『知の果てへの旅』

どんどん便利になっていく世の中、自動化が進み、いろんなことが簡単にできる。便利なものに囲まれる生活の中で、身近なもののしくみをどれだけ知っているだろうか、と考えてみる。たとえば、水洗トイレで水が流れる原理は?、と。 トイレは毎日のように使っ…

MCバトルと漫才

MCバトルのテレビ番組「フリースタイルダンジョン」をずっと見ている。始まってからもう2年半になる。MCバトルとは、即興のラップバトルのこと。とても中毒性が高く、毎週楽しみにしている番組だ。 いまとなっては普通に見てしまっているが、最初に見た時の…

新井紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

毎日のようにAIがニュースになる。身近なデバイスへの導入、技術のブレイクスルー、法律の整備などなど、その観点もさまざまである。その中でも、AIによって人間の仕事が奪われるのではないかという懸念をよく目にする。関連書も多い中で、他とは違う視点を…

『バッタを倒しにアフリカへ』、『フンボルトの冒険』

研究者のノンフィクションを2冊読んだ。どちらもフィールドワークという共通点があるが、ひとつは現代、もうひとつは19世紀が舞台となる。冒険や自然との格闘、時代ごとの研究の背景など、並べて考えてみるのもおもしろい。 前野ウルド浩太郎『バッタを倒…

『トラクターの世界史』と『団地団』

高校までの歴史の授業が苦手だった。なんとなく、つかみづらい。いまから振り返ると、その原因は授業の内容が政治史を重視で、その政治にあまり興味がもてなかったということが大きい。 歴史は、政治以外のさまざまなものからも語ることができる。たとえば、…

2017年下半期に読んだ本ベスト10

2017年の下半期を振り返って、良かった本を選んでみました。フィクションから5冊、ノンフィクションから5冊ということで。 フィクション 小川哲『ゲームの王国』 今年、一番好奇心を掻き立てられた小説。カンボジア圧政下で、少年と少女は世界を変えるために…

ひみつ道具の物語~『透明マントを求めて』、『気象を操作したいと願った人間の歴史』

科学技術の発展は目覚ましい。少し前までは想像の世界だったものが現実になる時代。想像されたものはいつか現実する、そんな気さえする。科学技術の歴史は、想像力と隣り合わせで進んできた。想像力の世界を覗こうとするとき、フィクションはいい材料を提供…

山田胡瓜『バイナリ畑でつかまえて』

ストリートビューに映り込む淡い記憶。レコメンドエンジンがほのめかす人の情。古い携帯にしみこんだ後悔。果ては、故人の人格が染み付いた人工知能とのすったもんだまで……。情報の海に人知れず降り積もる、どこかのだれかの物語を22編収録。 元IT系記者が描…

〈白いディストピア〉が待っている?~『すばらしい新世界』、『ハーモニー』、『ザ・サークル』~

ディストピア小説というジャンルがある。ディストピアとは、理想郷やユートピアの真逆の意味だ。その中でも、ユートピアを本気で目指した結果、ある人にとってはディストピアになるというタイプの系譜がある。あるテクノロジーや価値観が徹底され、それに疑…

小川哲『ゲームの王国』

ある作家の本を初めて読んで、この作品は好きかもしれないと思えたら、そのあとはいつも決まってこうだ。作者のことを調べて、ベテラン作家ならどこから読もうかと悩み、新人なら全部読もうと心に決める。興味はどんどん広がる。 自分にとって、小川哲『ゲー…

『ピクサー流 創造するちから』と『一般意志2.0』

『ピクサー流 創造するちから』は、アニメーションスタジオのトップをはしるピクサーの歴史とアニメーション制作の裏側を書いた本である。その歴史はそのままアニメーション技術の足跡になっている。また、経営に参加したスティーブ・ジョブズの知られざる一…

マイケル・ルイス『かくて行動経済学は生まれり』

『マネー・ボール』を書いたマイケル・ルイスの新刊がでた。それが行動経済学の源流となった二人の心理学者の物語となれば読んでみたい。と思いつつ、なんでそのテーマ?とも思った。なぜなら、マイケル・ルイスの主戦場は、『世紀の空売り』や『フラッシュ…

2017年上半期に読んだ本ベスト10

上半期も終わりということで、振り返って、良かった本を10冊選んでみました。 フィクションから5冊、フィクション以外から5冊で順不同です。 G.K.チェスタトン『木曜の男』 初チェスタトン。いちばん衝撃を受けた。スパイもの、ミステリ、幻想などジャン…

國分功一郎『中動態の世界――意志と責任の考古学』

人はどれだけ能動的なのか。意志というものは、たえず働いているのか。そんな疑問から本書は始まる。難しい話ではない。日常によくあることだ。いま酒を飲んでいるのは、意志によるものなのか?ゲームをやり続けてしまうのは?「強い意志をもて」ってどうい…

テクノロジーと秩序~G.K.チェスタトン『木曜の男』、イアン・ゲートリー『通勤の社会史』

G.K.チェスタトン『木曜の男』の冒頭を紹介するとこんな感じになる。とあるきっかけから、主人公は無政府主義者の秘密結社にたどり着く。見事な立ち回りの末に、指導的立場を得る。首脳の会議は7名からなり、それぞれに曜日の名前がついている。主人公は木曜…

ボケとツッコミから考える~『勉強の哲学』、『一億総ツッコミ時代』

千葉雅也『勉強の哲学』(文藝春秋)を読んでいて、槙田雄司『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)を連想したという話。 勉強の哲学 来たるべきバカのために 作者: 千葉雅也 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2017/04/11 メディア: 単行本(ソフトカバー)…

いま、紙の本について~『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』、『文体の科学』

電子書籍が登場してからというもの、ずっと考えていることがある。電子書籍だとうまく読めない、紙とは何かが違う。その何かとはいったいなんなのか、いつも名指せぬままだ。なぜか紙の方がしっくりくる。慣れの問題だろうか、それとも。短い記事ならスクリ…

ヒトと他とを分かつもの~『文化進化論』と『サピエンス全史』

アレックス・メスーディ『文化進化論』(NTT出版)を読んでいる。進化論という視点から、細分化された学問に統合的な見取り図をもたらすことを目指す。 文化進化論:ダーウィン進化論は文化を説明できるか 作者: アレックス・メスーディ,竹澤正哲,野中香方子 …

パーソナル・コンピュータ~『アラン・ケイ』と「ぼくの、マシン」

パーソナル・コンピュータの歴史をたどると、起源にアラン・ケイという人物がいる。コンピュータを研究者や専門家だけのものではなく、一般の利用へ普及するための理念を掲げた。それがDynabookと呼ばれる。具体的にも、マウスやウィンドウなど今では当たり…

経済と集団思考 ~ 『人工知能と経済の未来』、『賢い組織は「みんな」で決める』

『人工知能と経済の未来』を読んでいて、『賢い組織は「みんな」で決める』を連想したという話。 人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書) 作者: 井上智洋 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2016/07/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (18…

はじめに

本を読んでいると、既視感に見舞われることがある。前にどこかで同じようなものを・・というような。記憶を頼りに本棚から探してみると、確かに似ている。でも、全く同じではない。比べてみるとより細かいところが見えてきて、それがおもしろい。ときにはあ…