上半期も終わりということで、振り返って、良かった本を10冊選んでみました。
フィクションから5冊、フィクション以外から5冊で順不同です。
G.K.チェスタトン『木曜の男』
初チェスタトン。いちばん衝撃を受けた。スパイもの、ミステリ、幻想などジャンルを横断する面白さ。
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人はどれだけ能動的なのか。意志というものは、たえず働いているのか。そんな疑問から本書は始まる。難しい話ではない。日常によくあることだ。いま酒を飲んでいるのは、意志によるものなのか?ゲームをやり続けてしまうのは?「強い意志をもて」ってどういう意味?
ここであげた例は、誘惑に対抗する意志のような構図だ。そこには、能動と受動という対立があると考えてしまうが、本当にそうなのか。
なぜ能動対受動という対立を考えてしまうのか。その要因は、言語の文法に見出せるという。そのまま、能動態と受動態である。
そのような言語のあり方が思考の可能性を規定するという考えのもと、文法の歴史をさかのぼっていく。この過程が非常にスリリングでおもしろい。そこで探り当てたのは、いまはもう失われた中動態というもの。それは能動でも受動でもない。かつては、能動態は受動態との対ではなく、中動態と対になっていたのだ。この対は、主語が、動詞によって示される過程の外にあるか内にあるかで区別される。
続きを読む千葉雅也『勉強の哲学』(文藝春秋)を読んでいて、槙田雄司『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)を連想したという話。
人生の根底に革命を起こす「深い」勉強、その原理と実践。勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。だが人はおそらく、変身を恐れるから勉強を恐れている。思想界をリードする気鋭の哲学者による本格的勉強論。
続きを読むツイッターで気に入らない発言を罵倒し、ニコ生でつまんないネタにコメントし、嫌いな芸能人のブログを炎上させる。ネットで、会話で、飲み会で、目立つ言動にはツッコミの総攻撃。自分では何もしないけれど、他人や世の中の出来事には上から目線で批評、批難―。一般人がプチ評論家、プチマスコミと化した現代。それが「一億総ツッコミ時代」だ。動くに動けない閉塞感の正体はこうした「ツッコミ過多」にある。「ツッコミ」ではなく「ボケ」に転身せよ。「メタ」的に物事を見るのではなく「ベタ」に生きろ。この息苦しい空気を打破し、面白い人生にするために!異才・槙田雄司(マキタスポーツ)による現代日本への熱き提言。
電子書籍が登場してからというもの、ずっと考えていることがある。電子書籍だとうまく読めない、紙とは何かが違う。その何かとはいったいなんなのか、いつも名指せぬままだ。なぜか紙の方がしっくりくる。慣れの問題だろうか、それとも。短い記事ならスクリーンでも読めるが、数十ページはきつい。
どうやら記憶しやすさと関係があるのではないか、というヒントを見つけた2冊の本について書いてみたい。
まずは、佐々涼子『紙つなげ!彼らが紙の本を造っている』(早川書房)。東日本大震災で被災した日本製紙の石巻工場が復興する過程を描いたノンフィクションである。
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている: 再生・日本製紙石巻工場 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
アレックス・メスーディ『文化進化論』(NTT出版)を読んでいる。進化論という視点から、細分化された学問に統合的な見取り図をもたらすことを目指す。
第1章では、文化の定義と重要性を確認する。定義を引用する。
続きを読む文化とは、模倣、教育、言語といった社会的な伝達機構を介して他者から習得する情報である