人はどれだけ能動的なのか。意志というものは、たえず働いているのか。そんな疑問から本書は始まる。難しい話ではない。日常によくあることだ。いま酒を飲んでいるのは、意志によるものなのか?ゲームをやり続けてしまうのは?「強い意志をもて」ってどういう意味?
ここであげた例は、誘惑に対抗する意志のような構図だ。そこには、能動と受動という対立があると考えてしまうが、本当にそうなのか。
なぜ能動対受動という対立を考えてしまうのか。その要因は、言語の文法に見出せるという。そのまま、能動態と受動態である。
そのような言語のあり方が思考の可能性を規定するという考えのもと、文法の歴史をさかのぼっていく。この過程が非常にスリリングでおもしろい。そこで探り当てたのは、いまはもう失われた中動態というもの。それは能動でも受動でもない。かつては、能動態は受動態との対ではなく、中動態と対になっていたのだ。この対は、主語が、動詞によって示される過程の外にあるか内にあるかで区別される。
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